萬葉集
介 紹

第一期
 
第二期
 
第三期
 
第四期
東歌
防人歌
東歌

 巻第十四は、おもに東国諸国に行われた作者不明の歌を集めている。作歌年代も不明。当時、東国とは遠江(とおとうみ・静岡県)、信濃(長野県)より東、常陸(茨城県)、下野(しもつけ・栃木県)あたりまでを言う。


多摩川に曝(さら)す手作りさらさらに
何そこの児のここだ愛(かな)しき(卷 14,3373)


【現代語訳】

  多摩川で晒す手作りの布のように、さらにさらに、どうしてこの児がこんなに愛しいのだろうか。

(注)多摩川 ・・・ 多摩川河畔では手織りの麻布を朝廷に調(税)として献上した。今も調布の地名が残る。

【中文翻譯】

少女晾織布,多摩川濱

為何越看,越是愛煞人。

 


汝(な)が母に嘖(こ)られ
吾(あ)は行く青雲(あをくも)のいで来(こ)
我妹子(わぎもこ)逢ひ見て行かむ(卷 14,3519)


【現代語訳】

  あなたのお母さんに叱られて私は帰って行く。(青雲の)出てこい、我妹子よ、一目逢って行こう。


【中文翻譯】

既遭妳母叱,當離你歸

願妹能把門兒出,臨去見一回。

柵(くべ )越しに麦(むぎ)食(は)む
小馬のはつはつに相見し兒らしあやに愛(かな)しも(卷 14,3537)


【現代語訳】

  柵越しに麦を食む子馬のように、ちらっと相見たあの子が何とも言えずいとしい。


【中文翻譯】

小馬越柵欄,食麥歡

妹雖僅一見,分外惹人憐。

防人の歌

わが妻はいたく恋ひらし飲む水に
影(かご)さへ見えて世に忘られず (卷 20,4322)

【現代語訳】

  私の妻は激しく恋しがっているらしい。飲む水に影になってまで見えて、とても忘れられない。

(注)防人 ・・・ 上代から平安初期にかけて、唐・新羅の侵入に備え九州北部を守った兵士。約三千人からなり、三分の一が一年ごとに交替、任期は三年。東国出身者が多かった。

【中文翻譯】

阿妹戀心漪,難忘情

為何無“母”花,不見花開來。

父母(ちちはは)が頭(かしら)
かき撫で幸(さ)くあれていひし言葉(けとば)
ぜ忘れかねつる (卷 20,4346)

【現代語訳】

  父母が頭を撫でながら、無事でな、と言った言葉が忘れられない。

【中文翻譯】

爹娘摸頭,為我祝福

平安無恙,語語都記住。

韓衣(からころむ)裾(すそ)に取りつき泣く子らを
置きてそ来(き)ぬや母(おも)なしにして (卷 20,4401)錄音檔


【現代語訳】

  韓衣の裾に取り付いて泣く子らを残して来たのだ。母親もないのに。

(注)韓衣 ・・・ 大陸風の衣服。


【中文翻譯】

牽衣不放手,又哭泣

撇他竟來此,況乃沒娘兒。

原文部份- 

引用文獻 佐竹昭広等校注。『新日本文學大系萬葉集1-4』、岩波書局、
     1999~2003年。 p.389
引用文獻 佐竹昭広等校注。『新日本文學大系萬葉集1-4』、岩波書局、
     1999~2003年。 p.401
引用文獻 佐竹昭広等校注。『新日本文學大系萬葉集1-4』、岩波書局、
     1999~2003年。 p.429

中譯部分-除了"卷20,4322"譯者為陳玫君外,其他翻譯參考:

參考文獻 趙樂甡。「 萬葉集 」,譯林出版社。2002。