萬葉集 |
第四期
一 |
東歌
防人歌 |
|||||
東歌 |
|||||||
巻第十四は、おもに東国諸国に行われた作者不明の歌を集めている。作歌年代も不明。当時、東国とは遠江(とおとうみ・静岡県)、信濃(長野県)より東、常陸(茨城県)、下野(しもつけ・栃木県)あたりまでを言う。 |
|||||||
|
|||||||
多摩川で晒す手作りの布のように、さらにさらに、どうしてこの児がこんなに愛しいのだろうか。 (注)多摩川 ・・・ 多摩川河畔では手織りの麻布を朝廷に調(税)として献上した。今も調布の地名が残る。 |
|||||||
|
|||||||
汝(な)が母に嘖(こ)られ |
|||||||
あなたのお母さんに叱られて私は帰って行く。(青雲の)出てこい、我妹子よ、一目逢って行こう。 |
|||||||
既遭妳母叱,當離你歸 願妹能把門兒出,臨去見一回。 |
|||||||
柵(くべ )越しに麦(むぎ)食(は)む |
|||||||
柵越しに麦を食む子馬のように、ちらっと相見たあの子が何とも言えずいとしい。
|
|||||||
小馬越柵欄,食麥歡 妹雖僅一見,分外惹人憐。 |
|||||||
防人の歌 |
|||||||
わが妻はいたく恋ひらし飲む水に |
|||||||
【現代語訳】 私の妻は激しく恋しがっているらしい。飲む水に影になってまで見えて、とても忘れられない。 (注)防人 ・・・ 上代から平安初期にかけて、唐・新羅の侵入に備え九州北部を守った兵士。約三千人からなり、三分の一が一年ごとに交替、任期は三年。東国出身者が多かった。 |
|||||||
【中文翻譯】 阿妹戀心漪,難忘情 為何無“母”花,不見花開來。 |
|||||||
父母(ちちはは)が頭(かしら) |
|||||||
【現代語訳】 父母が頭を撫でながら、無事でな、と言った言葉が忘れられない。 |
|||||||
【中文翻譯】 爹娘摸頭,為我祝福 平安無恙,語語都記住。 |
|||||||
韓衣(からころむ)裾(すそ)に取りつき泣く子らを |
|||||||
韓衣の裾に取り付いて泣く子らを残して来たのだ。母親もないのに。 (注)韓衣 ・・・ 大陸風の衣服。 |
|||||||
牽衣不放手,又哭泣 撇他竟來此,況乃沒娘兒。 |
|||||||
原文部份- |